スポーツトレーナーについて知る
プロスポーツ選手やトップレベルの競技選手が行うトレーニングはもちろん、近年は健康増進、ダイエットなどにも科学的に証明できるトレーニング手法の採用が、その成果の決め手となってきています。プロのスポーツ選手でもひとりでそれらのトレーニングメニューを選定し、作り上げていくのは大変です。また一般的に健康増進やダイエット目的でトレーニングを行いたい人にとっては、専門家のアドバイスや指導なしでトレーニングや食事改善を行っても、思うような成果が得られない結果になることも少なくないようです。そこで、日常の基礎トレーニングにも、専門家の視点と指導が重要になってきているのです。それを職業とするパーソナルトレーナーの仕事の内容や活躍の可能性などを紹介します。
まずはパーソナルトレーナーの仕事内容を確認してみましょう。
パーソナルトレーナーが顧客として対応するのはスポーツ選手から一般の人までさまざま。多様な顧客がパーソナルトレーナーに依頼する目的もさまざまです。例えば、競技力を高めるために筋力を増強したい、体全体の管理やトレーニング指導をしてもらいたいといった目的から、健康維持のための日常的なトレーニングを継続的に行いたい、ダイエットを成功させたいといった目的もあります。こうした顧客の多様な目的に合わせてボディーメイクのためのトレーニング方法のような運動面と、それに合わせて効果を高める食事方法といった指導、そしてトレーニングや食事改善が継続的に実行できるように精神的なサポートまでをするのがパーソナルトレーナーです。
「パーソナル」という名前が意味するとおり、身体的状態やコンディションなどに合ったトレーニングメニューを、顧客の要望に沿ってマンツーマンで指導するのが特徴です。スポーツジムやフィットネスクラブに社員として勤務する方法のほか、業務委託によるジム等でのスポット指導や、完全自営で顧客からの直接の依頼に対応して指導する場合もあります。
パーソナルトレーナーとして活躍するためにはどのような適性が必要なのかを見ておきましょう。
パーソナルトレーナーという職業は性別を問わず可能性があります。人間の体の仕組みやトレーニング手法、そしてメンタルな部分までの専門知識や指導スキルが求められるので、そういった知識の習得や研究に興味があり、常にスキルアップを目指せる向上心が必要です。
また、性別や年齢、過去のスポーツでの実績の有無でのメリット・デメリットは基本的にないと考えられます。もちろん自分自身がスポーツ選手として活動した経験があれば、顧客の要望をより深く理解でき、また精神的に支えることもしやすくなるかもしれません。ただ、そうした点は、顧客と向き合って、丁寧なコミュニケーションを図り、顧客の表面的な目的を深く読み解き、根本的な課題を把握できる理解力、観察力などを磨くことで補っていく必要もあります。
つまり、パーソナルトレーナーに求められる適性、必要な能力としては、顧客の気持ちを理解するためのコミュニケーション力とともに、目的を達成しようとする顧客に寄り添う気持ちで活動することへの喜びか感じられるかどうか、と言えるでしょう。
パーソナルトレーナーは国家資格が必要な職業ではありません。民間資格はいくつかありますが、パーソナルトレーナーとして活動するために、必ず資格が求められるというものではありません。
しかし、その人のスキルや意識の高さの証明として資格があった方が有利であるのは言うまでもありません。計画的に資格取得をしておくと、将来の働きやすさや活躍場所の可能性を広げることにもなります。
パーソナルトレーナーとして活躍するために有利な資格については「パーソナルトレーナーとその資格取得について徹底紹介」を参考にしてください。
ここでは、パーソナルトレーナーの具体的な仕事内容について紹介します。
基本的には、ニーズのある個人から依頼を受け、その人の要望に即したトレーニングの方法をプランニングし、また、トレーニングの効果を維持、向上させるための食事指導などを行います。それらの流れを分かりやすく表すと、以下のようになります。
■顧客の依頼に基づきカウンセリングを実施
■顧客が言葉で伝えた要望の背景を深く理解するために年齢や経験などを考慮し、分析をする
「ダイエットを目標にトレーニングをする」の場合でも、それをさらに細かく見ていくと、減量をしたい、あるいは体重をあまり気にしていないが適切な筋肉を付けて引き締まった体型を目指したいなど目標は千差万別です。それに合わせたトレーニング方法や食事指導も多様なものになります。
さらに見た目だけの問題ではなく、「血糖値が高かったので痩せたい」という人や、「腰痛があるので体重を落としたい」という人もいるでしょう。そうした場合は単にダイエットができれば目的達成とはならず、健康面での目的達成をしなければ指導がうまくいったとは言えません。そのため、それぞれ異なったアプローチからトレーニング・食事メニューの内容を設定したり、指導したりする必要があります。
目的達成のためには、顧客の意識を変えてもらう(無理なダイエットで体重を減らすことを目的とするのではなく、適切に筋力を高め、腰痛改善を図るなど)。言われたままではなく、コンサルティングをするということを重視します。
■最終的な目標を定め、トレーニングプログラムと食事計画などを作成
■プログラムに従いトレーニングや食事内容の指導を実施
■定期的な効果の測定やメニューの修正等を行う
重要なことは、顧客の根本的な目標を達成するという結果を残すことです。それは単なる数値等に表れる結果だけではなく、顧客の精神的な達成感や満足感も得ていなければなりません。トレーナーとして指導する立場ではありますが、一方的な指示命令ではなく、支援して目標達成のお手伝いをするという意識が求められることになります。
顧客一人ひとりの目的を達成するために、顧客と一緒に最善のプログラムを実行していくパーソナルトレーナーですが、どのような働き方があり、将来性はどうなのでしょうか。
勤務先や雇用形態、そして収入について見てみます。大きく分けると次の2つの働き方があります。
正社員として働く場合は、平均月収は20万円ほどで、年収にすると約250万円が目安となっています。
ジムやフィットネスクラブでパーソナルトレーナーとして業務委託を受ける場合は、1時間程度の指導で3~5,000円が目安です。個人で開業する場合は契約内容にもよりますが、数千万単位の年収を稼ぐパーソナルトレーナーもいます。
Webサイトでの動画やブログでの発信は顧客獲得をするためのPRになるので、勤務・活動形態にかかわらず、自分の指導実績や研究活動などを勤め先や自分のサイトなどから発信することも大切です。まれではありますが、専門雑誌やWebサイトへの投稿の機会や本の執筆等のチャンスもあります。これらも仕事の一部であり、対価が支払われる場合は、雇用形態で仕事をしているトレーナーならば雇用先の了承があれば副収入を得られることになり、フリーランスならば収入の一部となります。
ジムやトレーニングセンターでスタッフとして働く場合は、その勤務体系に従います。土日や夜の利用者が多いので、勤務時間や休日はほかのスタッフと月ごとに配置やローテーションを決めるようなシフト制が中心になります。
一方のフリーランスは顧客の要請に合わせて従事するので、その合間に休日等を設定するといったことは自由です。昼間はジムやスポーツ関連の団体、公共サービスなどの施設へスポットで従事し、夜は個人からの依頼によるトレーニング指導をするなど、その人の企画力と行動力で働き方や業務量が変わってきます。業務と自由時間の配分など自己管理能力も求められ、また収入も業務量にほぼ比例しますので、フリーだからといって自由気ままな働き方や休み方ができるというわけでもありません。
先にも触れましたが、パーソナルトレーナーの指導を必要とする人たちというと、プロスポーツ選手やトップアスリートを思い浮かべるところです。もちろんそういった人たちからの依頼は多いのですが、近年は一般的な個人の健康増進やダイエットをより効果的に進めたいとする意向に合わせ、個別指導の需要も高まってきています。また、ダイエットを効果的に進め、健康的なボディーメイクを実現したいという目標を持った女性も増えていることから、女性のパーソナルトレーナーの活躍の場も広がっています。
パーソナルトレーナーは人と向き合って、人の要望をかなえる仕事です。やりがいも厳しさもいかに人の要望を把握し、適切な指導によってかなえられるかという点にあると言えます。
信頼関係を築くこと、顧客の要望に的確に応えることができ、顧客から感謝されることは、やはりパーソナルトレーナーにとっての大きなやりがいです。
結果が求められる仕事ですので、専門知識や指導スキルのほか、顧客のモチベーションを高めるための心理的な指導や、言葉にならないような要望もくみ取れるコミュニケーション能力などが求められ、それらのスキルの獲得もトレーナーの努力次第と言えます。
トレーニングや食事指導のスキルのみならず、指導者としての姿勢や寄り添う気持ちを常に見直し成長していかなければならない点が、厳しい職業であると言えそうです。
パーソナルトレーナーとして活躍するうえで最も大切なことは、「最善の方法を提案し、目標達成のサポートを提供すること」、「常に自分のスキルを高め、研究すること」。パーソナルトレーナーはやりがいと厳しさを実感でき、働き方にも自分自身にも可能性を感じられる職業なのです。