美容
皆さま、こんにちは!日中美容研究家の濱田文恵です。気温と湿度の高かった春夏から気温も湿度も下がる秋へと移り変わってきました。季節の移り変わりに合わせて、体調を崩す方が増えるだけでなく、美容トラブルに悩まされる方もいるでしょう。それに加え、近年は一年を通して感染症対策の一環で、人間関係や日々の生活習慣でストレスを感じたり、今までに経験をしたことのない出来事に不安を感じたりする方もいるはず。東洋美容の世界では、こころとからだは密接に関係していると考えられています。今回の東洋美容のヒントでは、日々の感情が及ぼす美容トラブルについてお伝えしたいと思います。
1.内傷七情とは?
東洋医学の考えの一つで、私たち人間が持つ"喜・怒・憂・思・悲・怖・驚"の七つの感情が、過剰になってしまった場合、体内にある臓腑を傷つけると意味を表しています。前回の記事でも登場した中国の古典書「黄帝内経(こうていだいけい)」の『素問・陰陽應象大論篇第五』では、
"天に四時五行があり、それによって生長、収蔵し、それによって寒暑燥湿風を生じる。人には五臓が五気を化すことがあり、それによって喜・怒・悲・憂・恐を生じる。ゆえに喜びと怒りは気を損ない、寒さや暑さが形を損なう"
と記されています。
私たちの感情は、体内にある臓腑によって気が作られ、その気によって感情が生じると言っており、感情が過剰になってしまった場合、本を辿れば気を乱れさせ、臓腑にまで影響をするという意味というわけです。
肌荒れや爪のひび割れ、髪の抜け毛などの美容トラブルにおいては、しばし体内からのアプローチが大切だったり、インナーケアの重要性が問われたりしますが、東洋美容の世界では、それに加え感情を伴う精神活動を管理したり、ケアをすることも重要と言えるのです。
2.【感情別】関連する臓腑と美容トラブル
2-1過剰な"喜"が招く顔色の悪さ
私たち人間にとって喜びの感情は良いことなのですが、東洋医学の世界では、過剰な喜びは気を緩ませて、喜びの感情と関連が深い"心"の働きを低下させると考えられています。
(過剰な喜びというのは、喜びの大きさではなく、イメージとしては薬物中毒に見られるような何も考えられず遊び呆けて、視点があわず、口から涎が流れ出ているような状態が続いていることを指します)
気が緩み、心の働きが低下すれば、血の流れに影響が出て、顔色が悪くなってしまいます。血色の感じられない顔色は、皮膚の下にある血管を流れる血の状態によるものなので、スキンケアだけではなかなか改善しにくくなるのです。気を緩ませてしまうような不適切な"喜"の感情には気をつけましょう。
2-2過剰な"怒"が招くシミの怖さ
怒りの感情は、五臓の"肝"と関連していて、過剰な怒りは肝を傷つけ、肝の働きを低下させます。肝には血を蓄え、疎泄という働きで、全身に気を巡らせながら血を全身の各所に分配する働きがあります。つまり肝の働きが低下すれば、血が上手く蓄えられなくなるだけでなく、気の流れも停滞。美容トラブルで言えば、ターンオーバーの遅れに繋がり、シミができてしまうのです。そこで、怒りを感じた時には我慢してそのままにするのではなく、適度なリフレッシュを取り入れるなどして、怒りの感情をきちんとリセットする癖をつけましょう。
2-3 過剰な"憂・悲"は乾燥肌の始まり
"憂・悲"の感情が過剰になると、五臓で関連する肺の働きを低下させてしまいます。肺には、全身の津液(水分)を巡らせる働きがあるので、肺の働きが低下すれば、津液の巡りが悪化します。美容トラブルで言えば、全身の乾燥肌を招くイメージです。特に肺は"水の上源"と言って、人体の上部の水分代謝を担うので、顔の皮フや頭皮の乾燥対策には欠かせない臓腑なのです。秋は、湿度の低下により乾燥が激しく肺に負担がかかりやすい季節。そのため秋は自ずと物思いにふけやすくなる時期とも言えます。だからこそ、スポーツの秋や食欲の秋で称される季節に合わせ、自宅にジッとこもるのではなく、気持ちが明るくなるよう活動的に過ごすといいですよ。
2-4 過剰な"思"は赤ニキビの元凶
"思"とは、中国語では、思念(sinian)を表し、意味としては考えること、思い悩むことを指します。
何か悩み事があるときに食欲が湧かないなんて経験はありませんか?
このように"思の"感情は、五臓の"脾"と関連します。脾の働きと言えば、食べたものから体に必要な気や血、津液の材料となる水穀の精微(栄養素のイメージ)を作り、心や肺に届ける働きがあります。そのため、考えごとが多かったり、思い悩んだりすることで過剰な状態になると、脾の働きが低下します。脾の働きが低下すれば結果的にせっかく食べたものが消化吸収されずに体内に残ってしまいます。食べ物は放っておくと腐敗しますよね?東洋医学では、体内で消化吸収されずに溜まってしまった状態の食べ物からは湿や痰が生まれると考えています。体内に生じた湿や痰は体外に出ようとして、赤ニキビに発展してしまう訳です。そこで、ついつい考え過ぎてしまう方は日頃からあまり考え込まない癖をつけるようにしましょう!
2-5 過剰な"怖・驚"は老化の始まり
怖さや驚きの感情が過剰となった場合には、五臓の腎に負担をかけます。例えば、ホラー映画やアクション映画のワンシーンで、登場人物が怖さや驚きのあまり失禁をしてしまうシーン。これはまさに怖さや驚きの感情が尿や膀胱と関連が深い"腎"と繋がっていることを表しています。腎の働きには、尿の生成以外にも、東洋医学では"精気"を蓄えているところとされています。精気とは、気血津液や五臓六腑の力の源であり、私たち人間はこの精気があるお陰で、成長したり、子孫を残せたりするわけです。腎の働きが低下し、精気を蓄える力が衰えれば、歯が抜けたり、白髪や抜け毛が現れたりと老化が加速してしまいます。そのため、私たち人間はあまり怖さや驚きの感情を持つ生活環境に身を置かない方がいいのです。怖さの感情には不安も含まれるので、近年恐れられている感染症が存在する日常では、腎への負担も大きいでしょう。適切な感染症対策をし、あまり過剰に怖さや不安を感じたりしないよう、ご自身で気持ちの整理をしていきましょう。
いかがでしたか?東洋医学の世界では、陰があれば陽があるように、陽があれば陰があるように、全てバランスが大事だと考えられています。
つまり、私たちが当たりまえに持つ感情もまたバランスが大切です。喜怒哀楽がバランス良く存在する、そんな豊かな毎日を過ごせることが心と体には最も良いというわけです。
ぜひ、感情の問題だから仕方がないと自分の心や感情を無視するのではなく、今どんな状態なのかを認識し、その時々の心と感情に合わせた過ごし方をしてみてくださいね。それが結果的に美容トラブルのない心と体が本来持つ健康的な美しさへと繋がる近道かもしれませんよ。
それでは、また次回お会いしましょう!
■著者プロフィール
日中美容研究家 濱田文恵
自身のニキビ肌をセルフ美容で克服した経緯を経て"キレイ" は自分でも作れることを啓蒙するため一般社団法人日本セルフ美容協会®を設立。毎日のセルフ美容に自身のルーツである東洋と西洋を組み合わせた独自の美養法を提唱する。著書『運命をこっそり変える』セブン&アイ出版。
国際中医薬膳師 / 医薬品登録販売者 /日本エステティック協会認定エステシャン / 日本毛髪科学協会認定毛髪診断士