鍼灸師について知る
鍼灸というのは東洋医学で用いられる治療法のひとつで、体のツボにはりやきゅうを用いて刺激を与え、改善を図るものです。
鍼灸を行えるのは鍼灸師(はり師、きゅう師)という国家資格を持った人だけです。この鍼灸師は安定した人気を誇る職業であり、社会人になってからでもあらためて学び直し、鍼灸師を目指す人も少なくありません。今回は鍼灸師の仕事内容を確認し、どうしたら鍼灸師になれるのか、また学ぶための費用はどれくらい必要なのかを見ていきましょう。
鍼灸師は「はり(鍼)」「きゅう(灸)」を使って、健康を回復させたり、健康を維持したりするための施術をします。
西洋医学に基づいた治療ではなく、東洋医学で発達した治療法です。東洋医学において「経穴(けいけつ)」と呼ばれるツボが人間の体には361箇所あるとされており、経穴と経穴をつなぐ「経絡(けいらく)」という一連の流れがあるとされています。その経穴や経絡に刺激を与えることで症状の緩和を図ったり、機能を回復させたりする治療に鍼灸が用いられます。こうした鍼灸を用いた治療に携わることができるのが鍼灸師です。
→鍼灸師の仕事内容についての詳細は以下の記事もご覧ください。
鍼灸師は国家資格を持った東洋医学の専門家です。はり師ときゅう師は別の国家資格で、両方を持っていれば、はりもきゅうも行うことのできる医療従事者として認められます。しかし、両方がないと仕事ができないわけではありません。どちらを受験するにも高等学校卒業後、あるいは高等学校卒業と同等の学力を認められた(高等学校卒業程度認定試験合格)あと、3年以上の鍼灸師養成施設(以下に詳細説明あり)で専門知識と実習を学んだのち、国家試験に合格することが必要です。
それぞれの仕事と資格についてみていきましょう。
はり師
はり治療というのは、極細のはりを経穴や経絡に刺し、微小の刺激を与えることで症状を和らげたり、血行改善を図ったり、機能回復を促したりするものです。効果があると考えられ、治療の対象とされている症状に、頭痛や神経系の疾患、関節症といった運動系の疾患、気管支喘息といった呼吸器系の疾患のほか、消化器系の疾患として便秘などがあります。はり師国家試験に合格し、はり師として名簿に登録することで資格が得られます。
きゅう師
きゅう治療というのは、一般的に「もぐさ(ヨモギの葉の絨毛を乾燥させて作られたもの)」と呼ばれるものを皮膚の上に置き、それを燃やすことで熱刺激を与え、症状の緩和や免疫力の向上、代謝改善を促す治療法です。主な治療対象とされている症状には、冷え性が挙げられるほか、健康維持のための予防医学としても利用されています。きゅう師国家試験に合格し、きゅう師として名簿に登録することで資格が得られます。
鍼灸師になるためには鍼灸に関する専門知識が学べる学校への通学が必要です。通信教育での資格取得はできません。
はり師、きゅう師の国家試験を受験するためには、以下に示す条件を満たす必要があります。
「学校教育法の規定によって大学入学ができる者であって、3年以上、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣が認定した学校、厚生労働大臣が認定した養成施設又は都道府県知事の認定した養成施設において、はり師、きゅう師となるのに必要な知識及び技術を修得したもの」(厚生労働省はり師・きゅう師国家試験の受験資格より抜粋)
では、具体的に鍼灸師を目指せる養成施設にはどのようなところがあるのでしょうか。
養成専門学校
例えば日本健康医療専門学校のように鍼灸学科があり、専門の基礎知識、医学(解剖学や生理学など)をはじめ、「はり・きゅう」施術に関する理論と実践が学べるカリキュラムが用意された施設です。こうした専門学校で3年間の履修を経て、国家試験受験資格が得られます。
4年制大学、または3年制短期大学
鍼灸学科のある4年制大学あるいは3年制短期大学で専門知識と技術を学ぶことで国家試験受験資格が得られます。国立大学、私立大学ともに鍼灸師が目指せる学科のある大学があります。
厚生労働省が発表しているはり師、きゅう師の国家試験科目と試験方法を確認しておきましょう。
試験科目:医療概論(医学史を除く)、衛生学・公衆衛生学、関係法規、解剖学、生理学、病理学概論、臨床医学総論、臨床医学各論、リハビリテーション医学、東洋医学概論、経絡経穴概論、はり理論またはきゅう理論及び東洋医学臨床論
ただし、同時にはり師、きゅう師国家試験を受けようとする場合は、はり理論またはきゅう理論以外の共通科目について、受験者の申請によりその一方の試験が免除されます。
試験方法:基本的には、筆記試験が課されます。
では、はり師、きゅう師の最近5年間の国家試験の受験者数や合格率を見てみましょう。以下のように5年間の様子をみると、合格率には変動があるものの、それぞれ毎年4,000名以上の人が受験している国家資格であり、5年間の平均値として7割程度の人が合格をしている(下記合格率で詳細明示)ことが分かります。合格者数に制限はないので、そこから考えると、超難関を突破しなくては得られない資格というものではないことが理解できます。(厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」各年度サイトを参照)
大切なのは、専門的な知識と技術を効率的にきちんと身に付けておくことです。また受験に際してサポート体制が用意されている施設や学校で学ぶことは合格の可能性を高めることにつながるでしょう。
国家試験合格までの1日のスケジュールや勉強については、以下もご参照ください。
「これがわたしの国家試験合格STORY」で、卒業生の合格までの道のりが掲載されています。
2020年:4,431名受験 3,263名合格 73.6%(合格率)
2019年:4,861名受験 3,712名合格 76.4%(合格率)
2018年:4,622名受験 2,667名合格 57.7%(合格率)
2017年:4,528名受験 3,032名合格 67.0%(合格率)
2016年:4,775名受験 3,504名合格 73.4%(合格率)
2020年:4,308名受験 3,201名合格 74.3%(合格率)
2019年:4,655名受験 3,656名合格 78.5%(合格率)
2018年:4,555名受験 2,845名合格 62.5%(合格率)
2017年:4,444名受験 3,010名合格 67.7%(合格率)
2016年:4,732名受験 3,504名合格 75.0%(合格率)
初年度では入学手続き時に諸経費なども含めて150~200万円ほど、3年間で400~500万円ほどが目安となっています。また、授業料以外にも白衣や実習道具などの費用が必要となる場合もあるので、予め確認しておくことが必要です。
鍼灸学科のある4年制大学の場合は、鍼灸師が目指せる学科(4年制)が設置されている大学で学ぶことが必要です。その場合の学費は大学によって異なります。4年間の学費は500万~600万円が目安ですが、それ以上必要になる大学も少なくありません。
国家試験の受験料と試験合格後の登録料が必要です。
国家試験の受験料は「はり師」「きゅう師」の1試験につき14,400円です。
登録料は免許税として支払うもので、申請手数料が別に必要です。1免許につき、申請手数料は5,600円、登録免許税は9,000円です。(2020年4月現在)
鍼灸師は人気のある職業です。いったん社会人になってから鍼灸師を目指すために学び直す人もいます。その背景には安定した活躍の場があることや、人の役に立てる実感のある仕事であるからという理由があるようです。しかし、学ぶプロセスにおいても、専門知識や実践力を身に付けていかなくては、国家試験に合格することはできません。また実際に鍼灸師になってからも医療に携わる職業故の厳しさもあります。
こうした現実を実感できるように学ぶことを考え始めた段階から、専門学校などの個別相談会に参加することもおすすめです。入学から卒業、試験までの疑問点や不安も解消するでしょう。
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