スポーツトレーナーについて知る
速さを競うスポーツでは、コンマ数秒の記録競争が展開され、またパワーを競う競技では極限まで筋力を鍛えることで相手より勝ろうとする世界。それが競技スポーツです。このわずかな勝敗の差はどれだけ心身を鍛え抜いたかの結果だと考えられます。そのために競技スポーツの選手たちは、科学的なトレーニングや、メンタルな部分を強化するためのトレーニングなどを採用し、各選手やチームが総力で試合に臨める体制、準備を整えるようになってきています。こうした背景から、競技スポーツ選手に対して、心身を安全に鍛え、最高のパフォーマンスができる状態をつくり上げるための指導者の役割も大きくなってきました。その指導に当たるのがスポーツトレーナーと呼ばれるプロフェッショナルな職業です。今回は、そのなかのひとつである、コンディショニングトレーナーについて紹介します。
まずはスポーツに関係するトレーナーの種類と主な役割から整理してみましょう。
スポーツトレーナーは大きく5つに分けられています。まずは、コンディショニングトレーナー以外の以下の4つがそれぞれの担う役割を確認しておきましょう。
コンディショニングトレーナーは、主にスポーツ選手の練習や試合のあとの体調管理と、けが・故障の予防のためのトレーニングメニューの考案や指導を行います。身体の柔軟性を保ち、必要な筋力を補強することで、激しい動きにも耐え、けがや故障をしにくい身体をつくることを目指します。
役割はそれぞれに重複する部分もあるのですが、大まかに分けるとアスレチックトレーナーがけが等の応急処置からその後の回復への指導を主に行い、メディカルトレーナーがけがからの回復のためのトレーニングを支援するのとはやや異なり、日常のなかでのけが予防・体調管理というコンディショニングに重きを置いていることがその違いだと言えます。けがや故障の有無にかかわらず、広くプロやハイアマチュアのアスリートをはじめ、一般のスポーツ愛好者にも、心身のコンディションを整えるための指導を行います。
次にコンディショニングトレーナー活躍場所や働き方について確認しておきましょう。
プロスポーツ選手やハイアマチュアのトップアスリート、そして一般のスポーツ愛好者が、より長く楽しく、そして安心・安全のもとで競技に打ち込めるような身体づくりを行うのがコンディショニングトレーナーの役割です。そのためコンディショニングトレーナーの活躍の場も幅広くなります。
仕事の内容は、対象者への練習前の柔軟運動や練習後の身体のケアのためのトレーニングの指導です。対象者となるのは、依頼者である選手や契約先のスポーツ団体に所属する選手、スポーツクラブの会員などです。特にアスリートを対象としている場合は、試合前の身体調整はもちろんですが、日常から長期目標の設定を行い、トレーニングメニューに沿った練習をしたことの効果の検証、さらに検証結果から必要に応じてトレーニングメニューの追加・変更などを行います。
仕事の仕方についても、正社員や契約社員といった勤務形態から、個別に業務委託で請け負うフリーランスとしての活動まで、さまざまにあります。
一般的なスポーツ関連のトレーナーの年収は職場環境によって違いはありますが、目安として600万円から1,000万円とさまざまで、どれだけ実力を認められているかによって異なります。年収を上げるためには、専門知識や技術の向上と、経験値を上げること、さらに、顧客からの信頼を得られる対応力やコミュニケーション力を高めることが必須と言えそうです。
コンディショニングトレーナーに求められるスキルや、資格などについて確認しておきましょう。
けがや故障を予防するためのトレーニングを考案するためには、広い知識と観察力、そして状況から分析や予測をする能力が求められます。対象としている相手の現在の状態と設定している目標から、最適なトレーニングプランを構成する力も問われます。そして相手の立場で話をし、必要な情報が十分に理解されるように伝えるためのコミュニケーションスキルも欠かせません。
基本的に必要とされる知識は、基本的な医療/医学、生理学、スポーツ医学、各種スポーツについての競技の性質やどのようなけがが多いかなど、多様です。人体についての知識、例えば、生理学や解剖学の知識があれば、さらに的確な指導ができるかもしれません。また、こうした専門的な知識を生かしながら、具体的な施術へと反映させる実践力も必要です。
コンディショニングトレーナーとして信頼され、頼られる存在になるためには、常に最新の知識や技術を学び続ける向学心、積極性が欠かせないでしょう。
さらに、フリーランスのコンディショニングトレーナーとして成功するためには、営業やマーケティング戦略などのビジネススキルも必要となります。例えば交渉力、コミュニケーション力、マネジメント力などがそれに当たるでしょう。
コンディショニングトレーナーとして働くためには、国家資格が必要なわけではありません。しかし、民間資格や知識を学ぶための協会は存在しています。例えば、一般社団法人日本コンディショニング協会では、コンディショニングを指導する人材を育成するためのプログラムや資格認定を行っています。(※詳しく知りたい方は、一般社団法人日本コンディショニング協会公式サイトのこちらのページをご確認ください)
コンディショニングトレーナーは、知識と技術、経験によりトレーナーとしての資質が認められ、選手やスポーツ団体、ジム等が仕事を依頼する形で成立します。つまり実力の世界と言えるのです。とはいえ、実力を示せるほどの実績や経験を証明するためにも、資格取得が有効だと言えます。例えば、理学療法士、柔道整復師、鍼灸師(はり師・きゅう師)などの国家資格があれば、信頼度は高まると考えられます。
アスリートをはじめ、一般人を対象に健康的な身体を維持し、積極的にスポーツに取り組むことをサポートするコンディショニングトレーナーは、ほかのスポーツトレーナーの存在と比べると認知度がまだ低いかもしれません。しかし、多くの人が健康的な生活を送るために、体調管理や食事内容を意識する傾向が強まっている現在、コンディショニングトレーナーの役割は大きくなると予想されます。コンディショニングトレーナーとして成功を目指すなら、まずはそれに関連した資格としての柔道整復師や鍼灸師(はり師・きゅう師)、理学療法士などの国家資格の取得で、基本的な技術と知識を得ることから始めることをお薦めします。
さまざまなトレーナーが競合するなか、より信頼してもらえる専門知識や技術を高めることが確実な近道であると言えるでしょう。