スポーツトレーナーについて知る
スポーツトレーナーというと、マシンを使って筋力をつけるトレーニングの指導をする姿が真っ先に思い出されます。しかし実際は、メディカル面で支えたり、日常の体調管理方法を指導したり、スポーツでのケガや障害からの回復のための支援をしたりするなど、仕事内容はさまざまです。また、一概にスポーツトレーナーといっても、ストレングスコーチ(ストレングストレーナー)、メディカルトレーナー、アスレティックトレーナーなど、種類も数多く存在します。今回は、スポーツ関連のトレーナーについて整理し、なかでもアスレティックトレーナーに焦点をあて、その役割や資格の種類、また取得しておくと役立つ資格までを紹介します。
スポーツに関連するトレーナーの役割を整理したうえで、アスレティックトレーナーについて見てみましょう。
スポーツ関連のトレーナーは、大きく次の5つに分けることができます。
以前はトレーナーというと、競技の技術や筋力向上のための指導者が中心でした。現在では、スポーツ時のケガや障害の予防、コンディション管理など、日常生活も含めた広い範囲で、そのすべてに関してトレーナーによる指導の必要性が高まってきているのです。
上述の仕事内容からわかるように、各トレーナーの指導領域は完全に分かれているわけではありません。どれも重なりあい、関連しあう部分があるのです。例えば、メディカルトレーナーとコンディショニングトレーナーはどちらも体調管理をしますが、前者はスポーツ外傷やスポーツ障害の回復について管理・指導をし、後者は競技での成果や練習時の効果を高めるための日常の体調管理を指導します。
それでは「アスレティックトレーナー」について、見ていきましょう。アスレティックトレーナーとは、スポーツドクターやコーチなどと連携し、トレーニングからコンディショニングにいたるまで、スポーツ選手を幅広くサポートし、指導するトレーナーのことを指します。仕事内容は、スポーツ外傷、スポーツ障害の予防から救急処置、リハビリテーションや日常生活におけるメンタル、フィジカル双方のコンディショニングなど、多伎にわたります。
仕事内容の詳細は、「アスレティックトレーナーとは?なり方や魅力、将来性などを徹底解説!」をご覧ください。
それでは、アスレティックトレーナーにはどのような資質が求められ、どんな知識や技術が必要なのでしょうか。
求められる資質と素養としては、まず研究熱心であることでしょう。アスレティックトレーナーの担当領域は広く、それぞれには深い知識と技術が必要です。そのため、常に新しい情報を仕入れて、知識や技術を更新し続ける研究者のような素養と意識が大切です。また、選手やチーム、ほかのトレーナーやコーチとの連携がはかれるような協調性や気配り、コミュニケーション能力が欠かせません。さらに、選手の状態や練習、試合結果の状況、選手の身体的なデータなどを多角的に分析して判断し、その先行きを予見できるような洞察力も必要です。結果を予測してトレーニングメニューをつくり、またそれを臨機応変に変更できるような柔軟さも求められます。
アスレティックトレーナーが備えておくべき知識は、多岐にわたります。骨や筋肉、内臓などの人間の体に関する医学的な知識、スポーツでのケガや障害に関する知識と、それらの防止、回復に向けたケアに関する知識など、幅広いのです。どれも短期間で習得するのは難しく、また最新のスポーツ医学情報は常に更新されるので、研究熱心な資質が重要になってくるのです。
アスレティックトレーナーが身につけるべき技術も複数あります。例えば、スポーツの現場での応急処置のスキル、アスレティックトレーナーとしての知識や理論にもとづいたトレーニングメニューの企画作成能力などです。また、トレーニングの結果や選手の身体的データの管理・分析を的確に行い、選手にあわせてトレーニングメニューに落とし込み、指導・アドバイスをするスキルも必要です。
具体的に、アスレティックトレーナーになるために取得すべき資格や合格率について見てみましょう。
アスレティックトレーナーには大変に高度な知識と技術が求められますが、じつは国家資格はありません。しかし、アスレティックトレーナーとして生計を立てようとしたとき、就職する、あるいは個人で仕事を請け負うことを考えると、基本的な知識の習得や能力の証として、次のような資格があると有利です。
1:柔道整復師、理学療法士、はり師・きゅう師、作業療法士、看護師、保健師、助産師、救急救命士、 あん摩マッサージ指圧師、カイロプラクター、栄養士、薬剤師、養護教諭」の資格取得者であり、これに加えて、同協会指定の「スポーツ医学、スポーツ科学、研究討論の4領域の69の単位取得者」である必要があります。
2:NATA認定トレーナー、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーの資格を有していれば規定の教育講座の単位取得は不要です。
3: 2年制以上の専門学校、大学及び大学院においてスポーツ科学系のコースを卒業し、本協会が認定する臨床医学系専門科目の単位及びスポーツ科学分野の単位(表1:4領域69単位)を取得した者であることが条件として求められています。
単位の取得方法は、同協会の本部および支部主催または関連団体主催の研修会に参加するか、通信教育(1科目あたり2単位5,000円)が基本です。これらを終了し、申請することで審査、認定となります。
なお、上記日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)もしくは下記、全米アスレティックトレーナーズ協会(NATA)の公認アスレティックトレーナー(ATC)の資格取得者は、4領域69単位の取得は不要です。
どちらの資格も決められた講義などを受けることが基本で、まじめに取り組めば合格できそうに思えますが、現実的にはそう簡単ではないようです。
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の合格率は高くありません。公式の合格率は発表されていませんが、10%以下とも言われています。
また、ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会認定アスレチック・トレーナーの資格を取得するにも、資格要件で医療系資格を始めとした資格保有が必要であることから、いきなり資格取得とはいきません。
言い換えれば、資格取得要件を満たすための資格を取得するところから考えると、厳しい道のりになることを想定しておく必要があるでしょう。
上記ふたつの資格以外では、全米アスレティックトレーナーズ協会(NATA)の公認アスレティックトレーナー(ATC)があります。ATCの合格率は8割程度とされますが、「アスレティックトレーニング教育認定委員会(CAATE)」により認定された大学の養成カリキュラムを受けて卒業する必要があり、日本からは留学する必要があることに注意しなければなりません。
公認の資格を取得できても、アスレチックトレーナーとして活躍できるようになるには、実際の現場に役立つ知識や技術、そして活動した実績が必要です。アスレティックトレーナーの担当領域のひとつに、スポーツにおける外傷や障害からの回復や予防がありますが、その技術の習得と証として、次のような資格も有効です。これらはジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会認定アスレチック・トレーナー(JATAC-ATC)の資格要件でもある国家資格です。
なかでも柔道整復師は、NSCA認定資格と合わせ持つことで、ケガの治療やそのあとのケアなどの実践的な部分をカバーすることができます。なお、これらは同時に習得を目指すこともできる学校もあります。JSPO-ATやJATAC-ACTの資格取得を目指しながら、並行して学習し資格を取得しておけば、アスレティックトレーナーとして早期に活躍できる可能性が高まるでしょう。
柔道整復師の国家資格とNSCA認定資格を同時に目指すことができる学校はコチラからご覧ください
スポーツ選手をサポートするアスレティックトレーナー。アスレティックトレーナーとして幅広い活躍をするためには、柔道整復師や鍼灸師(はり師、きゅう師)などの国家資格も同時に取得することがおすすめです。治療や術後のケアが行える医療にかかわる技術が身につけられることで、アスレチックトレーナーとしてより実践で活躍できるでしょう。