スポーツトレーナーについて知る
ひと口にインストラクターといってもその種類は多様で、スポーツをはじめ多くの分野にインストラクターは存在します。しかし、インストラクターと聞けば、スポーツ関連のインストラクターを思い浮かべる人が多いでしょう。スポーツ関連のインストラクターとはどういった職業なのか、トレーナーとの違いや、おもなスポーツインストラクターの種類や資格を紹介します。
インストラクターとは、日本語では「指導員」という意味を持ち、特定の分野で技術を指導する職業を指します。冒頭でもふれたように、スポーツ関連のインストラクターが一般的です。スポーツ以外の分野でも、例えば「食育」「パソコン」「医療事務」「服飾」などの指導を行う職種もインストラクターと呼ばれています。
インストラクターに近い職種としてトレーナーがあります。トレーナーは、基本的にスポーツ界でのみ存在する職種ですが、インストラクターとはどのような違いがあるのでしょうか。
基本的にはそれぞれの競技に必要な技術や知識を教育、指導します。例えば、スキーのインストラクターであれば、パラレルターンやウェーデルンなどのスキーの技術や知識の指導にあたります。上達するためのメニュー作成も、インストラクターの仕事のひとつです。
おもに、選手が競技で100%の能力を発揮できるように、体力づくりや競技特有の技術力アップの指導を行います。インストラクターによる技術や知識指導の前の段階で、技術の獲得に必要な力をつけるための健康管理、体調管理、メンタルケアなど幅広い分野でサポートをするのがトレーナーの仕事です。
実際にインストラクターにはどういった種類があるのか、スポーツ系インストラクターに焦点をあてて紹介します。
フィットネスクラブやスポーツジムで利用者に対し、トレーニング計画の立案や指導のほか、トレーニングマシンの扱い方を教えます。フィットネスクラブやスポーツジムのインストラクターは、特定のスポーツの指導をするのではなく、ダイエットや健康維持、持病の改善などさまざまな目的を持った利用者のサポートを行います。そのため、さまざまなスポーツの知識のほか、けがやリハビリなどに対する知識があると、さらに活躍の幅が広がるでしょう。
おもにヨガスクールやカルチャーセンターなどで、ヨガのポーズや呼吸法を指導します。また、個人で活動して出張レッスンや老人ホーム、介護施設でヨガを教えるインストラクターもいます。ヨガインストラクターの資格としては、全米ヨガアライアンスが認定する資格が代表的です。この協会の認定する資格は認定200時間のRYT200から全米ヨガアライアンス認定キッズヨガなどいくつか種類があります。
ピラティスは、もともとは負傷した兵士のリハビリトレーニングのために開発されたエクサイズです。ドイツが発祥地であることから「西洋のヨガ」とも呼ばれています。
ヨガインストラクターと同様、ヨガスクールでピラティスの指導をしたり、個人で出張レッスンを行ったりします。代表的な資格としては、日本ピラティス指導者協会のマットピラティス・ベーシックをはじめとした資格取得コースがあります。またその他、PHIピラティスジャパンのPHI Pilates インストラクター資格などがあります。
ボディメイクインストラクターは、フィットネスクラブやスポーツジムなどで、利用者が求める理想の体形に合わせたトレーニング方法や、食事の指導などを行う仕事です。理想の体形をつくる専門家ということから、エステティックサロンや美容関係で活躍する機会もあります。
代表的な資格としては、日本能力開発推進協会のボディメイクインストラクター資格があります。
音楽に合わせて行う有酸素運動である、エアロビクスの指導をするインストラクターです。近年では、エアロビクスから派生したエアロビックダンスやエクササイズを、技術的に体系化した競技エアロビックとして、スポーツにも発展しています。エアロビックのインストラクターもエアロビクスインストラクターに含まれます。エアロビクスインストラクターは、フィットネスクラブやスポーツジムもしくは個人で、さまざまな場所でエアロビクスの指導を行います。代表的な資格としては、日本エアロビック連盟が認定するエアロビックリーダーや日本スポーツ協会と共催で認定している公認エアロビックコーチなどがあります。
ストレッチとは、スポーツをする前もしくは後に行う準備・整理運動です。全身の筋肉を引き伸ばし、身体を柔軟にすることでスポーツによるけがや障害を予防します。
ストレッチインストラクターの需要は、フィットネスクラブ、スポーツジムのほか、最近では、介護施設や介護予防教室などで高まっています。
代表的な資格としては、日本ストレッチング協会のストレッチングインストラクターがあります。
ダンススクールやフィットネスクラブ、もしくは個人でダンスの指導をするインストラクターです。ダンスには、ジャズ、ヒップホップ、社交、タップ、フラ、チアなど多様な種類がありますが、ダンスインストラクターはこれらすべてのダンス指導をするのではありません。
一般的には、特定のダンスの指導をするのがダンスインストラクターの仕事です。インストラクター専業のほか、現役のダンサーがインストラクターを兼業するケースも多いです。
代表的な資格としては、ダンス教育振興連盟の認定ダンス指導員や認定ダンス指導士があります。ただし、これらの資格は学校教育に取り入れられたダンスの指導、もしくは社交ダンスの指導を行ううえで必要な資格であり、前述したようなダンスの指導を行うには特に必要な資格はありません。
ボクシングインストラクターというと、試合でセコンドに陣取り、選手にアドバイスする人というイメージがあるかもしれません。しかし、試合会場で選手を指導するにはマネージャー、トレーナー、もしくはセコンドライセンスが必要です。
ボクシングインストラクターは、セコンドとして試合会場に入ることはできませんが、ボクシングジムやフィットネスクラブでボクシング、もしくはボクササイズの指導をする仕事です。ボクササイズの指導であれば、ボクシングの経験がなくてもインストラクターになれます。
スイミングスクールやフィットネスジム、スポーツクラブなどで水泳の指導をする仕事です。最近では、水中で行うエアロビクスの指導をする場合もあります。
スイミングインストラクターは、基本的に自身もプールの中に入って指導するため、体力の消耗が激しいといえます。また、受け持ちのレッスン時間以外にも、プール内で安全監視することも仕事のひとつです。
資格取得が必須ではありません。しかし、上述した施設で水泳指導を行うには、資格を取得しておくと有利です。代表的なものとしては、日本スイミングクラブ協会と日本スポーツ協会、日本水泳連盟との合同で認定する「公認水泳教師」「公認水泳上級教師」があります。また、各対象者別講習会を履修することで幼児、学童、成人、競技、ベビー、高齢者、妊婦と7種類の水泳指導者資格が用意されています。
ほか、スイミングインストラクターは水泳以外にも水中運動、アクアダンス、アクアウォーキングエクササイズなどがあり、これらも資格を取得していると就職に有利となるでしょう。
ゴルフの指導者になるには、レッスンプロのように資格が必要なものもありますが、ゴルフインストラクターには資格がありません。ゴルフスクールやフィットネスクラブなどで、子どもから高齢者まで年齢を問わず、生徒にゴルフの技術や楽しさを伝えるのが仕事です。
就職で有利になる代表的な資格としては、日本プロゴルフ協会のティーチングプロや全日本ゴルフスクールプロ指導者連盟のゴルフインストラクター認定があります。どちらもプロゴルフプレーヤーとして、トーナメントに出場するような経歴がなくても、指導力さえあればインストラクターとして活躍が可能です。
スキー場でスキーの指導をする仕事です。スキーはウィンタースポーツで、1年のうち一定期間しか活躍の場がありません。そのため多くの場合、ほかの仕事と兼業、もしくはスキー場でほかのスポーツ、アクティビティの指導をかけ持ちしているケースが多いようです。
スキーインストラクターの資格には全日本スキー連盟が認定している「スキー(準)指導員」が代表的です。都道府県スキー連盟ごとに資格検定開催の有無、日時、難度は異なりますので各都道県スキー連盟に確認してください。
チャイルドスポーツインストラクター、キッズスポーツインストラクターなど呼び方はさまざまです。基本的には、スポーツクラブやスポーツジムまたは保育園や幼稚園、児童養護施設などで、子どもを対象に体操やボール遊び、身体の動かし方などを指導します。
代表的な資格は、日本スポーツ協会のジュニアスポーツ指導員やライフスポーツ財団のキッズスポーツインストラクターなどがあります。
スポーツ系のインストラクターになるためには、それぞれの競技の技術や知識を習得することがもっとも重要です。また、いかに効果的に技術や知識を伝えられるか、その指導力が求められる仕事でもあります。
しかし、それ以上に重要なのは、指導を通してスポーツの魅力や楽しさを伝えることです。ひとりでも多くのスポーツ競技愛好者を育てていくことが、スポーツ系インストラクターのもっとも重要な役割だといえるでしょう。