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部活動指導員とは?外部指導者との違いや資格を得るための方法を解説

2017年4月1日から、学校教育法の一部改正により「部活動指導員」が制度化されました。それまで学校教員や外部指導者が行ってきた部活動の指導に、部活動指導員がかかわることで、生徒の活動の幅が広がっています。今回は、今後ますますの活躍が期待される部活動指導員について、外部指導者との違いや制度化された理由、部活動指導員になる方法やメリット・デメリットについてお伝えします。

部活動指導員とは?

部活動指導員とは、校長の監督を受け、スポーツ、文化、科学などに関する部活動の技術指導や、大会、練習試合といった学校外での活動の引率などに携わる人材を指します。技術指導や引率だけでなく、「用具・施設の点検や管理」「部活動の管理運営(会計管理など)」「保護者などへの連絡」「年間・月刊指導計画の作成」「生徒指導にかかる対応」「事故が発生した場合の現場対応」なども担当します。

外部指導者との違い

従来、部活動を指導してきたのは、学校教員や外部指導者でした。外部指導者は、部活動の担当教員と連携、協力しながら、主に技術面の指導を行う人材であり、地域の経験者が指導者として迎えられることが多く見られました。待遇は学校によって異なりますが、基本的にはボランティアであるケースがほとんどです。教員のような公的な立場ではないため、外部指導者が単独で、大会、練習試合などの学校外活動の引率はできません。

一方、部活動指導員は、制度化に伴い、学校職員として位置づけられます。技術面のサポートだけでなく、学校外活動の引率が可能で、指導者として生徒や保護者に対してできることの幅が広がります。また、自治体によって金額は異なるものの、部活動指導員には報酬が発生することになっています。外部指導者と比べて、部活動指導員は、報酬を受け取りながら学校内外で幅広く活動できるという違いがあるのです。

部活動指導員が制度化された背景

部活動指導員が制度化された背景には、部活動にかかる学校教員の負担増大があります。これまでは、外部指導者に技術指導を依頼できても、そのほかの事務的な作業や引率、保護者への連絡といった業務は、学校教員が担当していました。通常業務に加えて、部活動にかかる負担が大きくなれば、学校教員はゆとりのある働き方ができません。

外部指導者もいない学校では、技術指導も学校教員が行わなければならず、勤務時間外の業務が増える一方でした。そこで、部活動にかかわる学校教員の負担を少しでも軽減させるため、さまざまな職務を担う部活動指導員が制度化されたのです。

部活動指導員のメリット・デメリット

これからスポーツ分野での仕事に就きたいと考えたとき、新たに制度化された部活動指導員になることを考える人もいるでしょう。自分に合った働き方ができるかどうかを見極めるために、部活動指導員という職業のメリットとデメリットを見てみましょう。

部活動指導員になるメリット

部活動指導員という仕事に就くメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

  • 教員免許がなくても、生徒の指導にかかわれる
    生徒の指導にかかわりたいと思っていても、教員免許がないため、機会が得られないこともあります。しかし、部活動指導員は教員免許を取得していなくても、生徒の指導にかかわることが可能です。自分の得意分野や経験を生かして活躍でき、部活動を通して教育現場に携われるというメリットがあります。
  • 生徒に細やかな指導ができる
    従来のように外部指導者という身分でも、生徒の指導にかかわることはできます。しかし、技術面での指導はできても、学校外の活動は単独では行えず、学校教員の付き添いが必要です。部活動指導員になれば、大会や練習試合などに単独で引率ができるため、学校外活動の責任者として生徒との関わりも深まります。また、保護者との直接的なつながりができるため、幅広い視点でサポートが可能です。
  • 報酬を得ながら指導ができる
    ボランティアになりがちな外部指導者と比べて、部活動指導員は制度化によって報酬が発生します。仕事としての責任感も高まり、収入を得ながら部活動の指導に専念できるでしょう。
  • 自分の経験や得意分野を生かせる
    部活動指導員は、スポーツだけでなく、吹奏楽のような文科系の部活動の指導も可能です。学校によって募集する分野や求められる人材が異なりますが、経験を生かして働くことができれば、自身のキャリア形成に大きく影響するでしょう。

   

部活動指導員になるデメリット

一方で、部活動指導員という職務には以下のようなデメリットもあります。

  • 技術指導以外にもさまざまな対応が求められる
    部活動の指導では、技術面だけでなく、メンタル面のケアへの対応も求められます。外部指導者もメンタル面に対するケアを行いますが、部活動指導員は、教員不在の場面で生徒と向き合う時間が増えるため、これまで以上の配慮が求められるでしょう。保護者とのつながりが深まる一方で、問い合わせやクレームへの対応も引き受けることになります。大変な面もありますが、その分、一体感を持った指導が可能です。生徒の心身の成長を見守りながら指導し、保護者の理解を得られるまで十分に対応するといった心がまえが必要でしょう。
  • 指導者としての責任が増える
    上述したように、部活動指導員は学校外の大会や練習試合において単独の引率が可能です。しかし、万が一、事故が起きれば現場対応が求められるだけでなく、指導者としての責任が問われることになるでしょう。引率時には十分に注意をするだけでなく、事故が起きた際の対応を事前に確認しておくことが重要です。

部活動指導員になるには?

部活動指導員になるために必ず取得しなければならない資格はありません。しかし、学校教員に代わって部活動を指導する以上、経験や技術だけでは職務の遂行が難しい面もあるでしょう。専門的な資格を取得していると、できることの範囲も広がります。ここでは、部活動指導員になる方法を簡単に説明したうえで、おすすめの資格を紹介します。

部活動指導員になる方法

部活動指導員は、法律上では、「指導するスポーツや文化活動等に係る専門的な知識・技能のみならず、学校教育に関する十分な理解を有する者」と規定されていますが、細かい条件は各自治体によって異なります。

一定の資格を必須とする場合や、6年以上の中学や高校、大学での部活動指導経験を求めている自治体もあります。そのため、自分が部活動指導員を目指す地域の自治体が発表する募集要項を必ず確認し、その条件を満たさなければなりません。

部活動指導員として働くうえでおすすめの資格

  • 部活動指導員検定試験(日本部活指導研究協会)
    部活動指導員検定試験は、一般社団法人日本部活指導研究協会認定による民間資格です。3級から上級までの4つのランクがあります。試験内容は、3級の場合、文部科学省が策定した「運動部活動での指導のガイドライン」にもとづいて、「学校一般科目」に関する動画講習を受講後、テストに臨み、正答率80%以上が合格基準です。もしくは、会場で講習を受けた後、専用ワークシートを完成させ、審査によって認定を受けられます。
  • スポーツ指導者資格(JSPO
    スポーツ指導者資格は、公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)認定による民間資格です。スポーツ指導者基礎資格として、「コーチングアシスタント」と「スポーツリーダー」があります。ただしスポーツリーダーの認定は2022年(令和4年)で終了するため、それ以降はコーチングアシスタントの資格を取得するとよいでしょう。

上記の資格に加え、おすすめなのが鍼灸師、柔道整復師などの医療系国家資格の取得です。治療が可能になる資格であり、万が一、生徒がケガをした際に応急処置が可能になります。部活動指導員としての信頼度が高まるだけでなく、ケガをした生徒のサポートをより丁寧に行えるでしょう。また、全国大会出場レベルの部活動を指導する場合は、NSCA認定のトレーナー資格を取得するのもよいでしょう。より本格的なトレーニングやコンディショニングなどの専門知識が得られます。

部活動指導員を目指すなら資格取得がおすすめ

学校教員は、通常の業務だけでも多忙であるにもかかわらず、部活動の指導という負担も抱えています。部活動指導員の役割は、生徒への指導だけでなく、教育現場そのものへの支援としても大きな意味があります。

ただし、部活動指導員は技術の指導だけではなく、部活動の運営にかかわるほとんどの職務を担うことになります。そのため、部活動を運営するための幅広い知識や経験が求められます。部活動指導員検定試験に合格している、またはスポーツ指導者資格を取得している場合は、より信頼される人材となるでしょう。さらに、鍼灸師や柔道整復師の資格があれば、働き方の選択肢も広がります。今後、部活動の指導者を目指したいと考えているなら、まずは専門的な資格取得から取り組んでみてはいかがでしょうか。